バリアブル印刷とは何か。
仕組み・費用・自分でやる方法まで。
1枚ずつ中身の違う紙を刷る技術のことです。宛名、通し番号、QRコード、写真まで、受け取る人ごとに変えられます。ただ、調べはじめると「印刷会社に見積もりを取ってください」で終わってしまうことが多いはずです。このページでは、何ができて、いくらくらいかかって、どこでつまずくのかを、順番に書きます。自分の会社でやる方法と、その限界にも触れます。
最終更新:2026年9月11日 / みちびきworks(ダレヨミ運営)
1. バリアブル印刷とは
バリアブル印刷とは、あらかじめ用意したデータをもとに、1枚ずつ内容を変えながら刷る印刷のことです。「可変印刷」とも呼ばれ、英語の Variable Data Printing から VDP と略されることもあります。呼び方が違うだけで、指しているものは同じです。
ふつうの印刷は、1つの版から同じ紙を何千枚も刷ります。バリアブル印刷は、1枚ごとに違う版を作っているのと同じことをします。だからこそ、DMの1通目には田中様、2通目には佐藤様、と印刷できます。
年賀状の宛名印刷を思い浮かべると近いです。あれを、宛名だけでなく本文や画像やQRコードにも広げたもの、と考えて差し支えありません。
2. どういう仕組みで動いているのか
用意するものは、いつも2つです。
| ① デザインのファイル (共通部分) | 全員に同じように刷られる部分です。キャッチコピー、写真、会社名、地図など。ここは1つしかありません。 |
| ② 差し込むデータ (可変部分) | 1行が1人分になっている表です。ExcelかCSVで作るのがふつうです。氏名、住所、顧客番号、QRに入れるURLなど、人によって変わるものを列に並べます。 |
この2つを組版のソフトに読み込ませ、「ここに氏名の列を置く」「この大きさでQRを置く」と指定します。あとは出力すると、1人目、2人目、3人目……と中身の違うページが人数分できあがります。それをデジタル印刷機で刷る、というのが全体の流れです。
枚数が多いときは、共通部分だけを先にオフセット印刷で大量に刷っておき、その紙にデジタル印刷機で可変部分だけを後から重ねる、というやり方も取られます。写真の発色を保ちながら、可変の部分だけを1枚ずつ変えられるためです。
3. 何を可変にできるのか
| 宛名・氏名 | いちばん多い使い方です。「○○様」を1件ずつ差し替えます |
| 通し番号(ナンバリング) | チケット、商品券、抽選券。1枚ずつ違う番号を振ります |
| QRコード・バーコード | 1枚ずつ違うURLや番号を持たせます。受付やクーポンの管理に使われます |
| 文面 | 前回買った商品、契約の更新月、担当者名など。人によって文章そのものを変えます |
| 画像 | 地域ごとの店舗写真、車種の写真など。ただし画像は全部同じサイズに揃える必要があるのがふつうです |
組み合わせることもできます。たとえば「○○様、お近くの△△店で使えるクーポンです」の氏名と店名と地図とQRを、全部1件ずつ変える、といったことです。
4. 費用はいくらか
調べても「定価」が出てこないのには理由があります
バリアブル印刷は、たいていの会社が価格表を出していません。ページを開くと「お見積り」と書いてあるだけのことが多いはずです。不親切なのではなく、データの形と可変にする範囲で、手間が何倍も変わるからです。CSVで整った表が届くのか、画像を1枚ずつ紐づける必要があるのかで、作業量がまったく違います。
そのうえで、印刷会社が公開している説明を読むと、費用感はおおよそ次のように書かれています。
| 通常の印刷物と比べて | 5割〜10割ほど高くなることも |
| 数百枚の小ロットの場合 | 1枚あたり数百円になることも |
| パーソナライズDMの一式 | 3万円台から、という例 |
※ 各社が公開している解説ページに書かれている水準です。実際の金額は、紙のサイズ・枚数・可変にする項目の数・データの形で大きく変わります。必ず見積もりを取ってください。ここに書いた数字は「桁を知るため」のものです。
枚数が少ないほど、1枚あたりは高くつきます。バリアブル印刷はデータの作り込みに手間がかかり、その手間は100枚でも1万枚でもあまり変わらないためです。数百通のDMに使いたい、という相談がいちばん見積もりで驚かれやすいのは、このためです。
5. つまずきやすいところ
| 文字数が違うと、 レイアウトが崩れる | 「林様」と「長谷川小太郎様」では長さが違います。枠からはみ出す、改行がずれる、という事故が起きます。いちばん長い名前を探して、そこに合わせて枠を決めておくのが確実です。 |
| 旧字・異体字が化ける | 﨑(たつさき)、髙(はしごだか)、邊・邉。顧客名簿には必ず混ざっています。印刷会社に渡す前に、どの文字が使われているかを確認しておくと手戻りがありません。 |
| 画像は、サイズを 揃えておく | 写真を差し替える場合、1枚ずつ大きさが違うと収まりません。あらかじめ同じ寸法に切り揃えてから渡します。 |
| 試し刷りを飛ばさない | 特にQRやバーコードは、紙質・インク・大きさで読めなくなることがあります。本番の紙で1枚刷って、実際にスマホで読んでから進めてください。画面上では問題なく見えます。 |
| 顧客名簿を、 社外に渡すことになる | 宛名を可変にするということは、氏名と住所の一覧を印刷会社へ預けるということです。どこに保管され、いつ消されるのかを、発注の前に確認しておくのが安全です。社内規程で持ち出せない会社もあります。 |
6. 自分の会社でやることはできるか
できます。枚数が多くなければ、手元のソフトで足ります。
| Word の差し込み印刷 | Excelの名簿を読み込んで、氏名や住所を1件ずつ差し替えられます。QRコードも、DisplayBarcode というフィールドを使えば1件ずつ違うものを作れます(Microsoftの正式な機能です) |
| InDesign のデータ結合 | CSVを読み込んで、文字も画像も1件ずつ差し替えられます。デザインの自由度は高いですが、ソフトと慣れが必要です |
事務所の複合機で刷るなら、外注せずにここまで完結します。数百通なら、現実的な選択肢です。
具体的な手順は、QRコードを一括作成する方法にまとめました。Wordの差し込み印刷でQRを1件ずつ変える書き方を、順番どおりに書いています。アンケートに使う場合は、QRコードでアンケートを取る方法のほうが近いと思います。
ただし、刷ったあとは分かりません
WordでもInDesignでも、1件ずつ違うQRを刷ることまではできます。けれど、そのQRが誰に読まれたかは記録されません。QRの中身はただのURLなので、読まれても手元には何も残らないからです。「田中様のQRが昨日2回読まれた」を知るには、宛先とURLの対応を持っていて、読み取りを受け止める側の仕組みが別に要ります。
7. 「QRだけ可変にしたい」なら、
印刷会社は変えなくていい
ここまで読んで、「うちがやりたいのは宛名でも画像でもなくて、誰が反応したかを知りたいだけだ」と思われた方もいるはずです。その場合、印刷の座組みごと変える必要はありません。
私たちが作っているダレヨミは、そこだけを引き受ける道具です。お預かりした印刷用のPDFに、宛先ごとに違うQRコードを差し込んで、PDFのまま返します。印刷も発送もしません。いま使っている印刷会社も、いまのデザインも、いまの発送方法も、変えなくて構いません。変わるのは、紙に載るQRが一人ずつ違うことだけです。
受け取った方がQRを読むと、指定のページへ転送されると同時に、管理画面に「誰が・いつ・何回」が名前で残ります。料金はQR1件につき5円(税別)、初期費用も月額もありません。
できないことも、先に書いておきます
ダレヨミはバリアブル印刷のサービスではありません。できるのはQRの差し込みだけで、宛名・文面・画像の可変はできません。宛名も入れたい場合は、Wordの差し込み印刷で宛名を入れてPDFに保存し、そのPDFをダレヨミに読み込ませてQRだけを足す、という順番になります。印刷と発送は、これまでどおりご自身か、いまの印刷会社にお願いする形です。
また、QRを読んだ方が宛名のご本人とは限りません。ご家族が先に読むことも、URLが共有されることもあります。お伝えできるのは本人確認ではなく、「配った紙のどれが、いつ、何回読まれたか」までです。